松岡正剛さんのファンになりました。

彼の編集工学論は、私たちの仕事の方法論にまで食い込んできました。 まだまだ本を深く読み込んだわけではないのですが、治療論を論じる方法のポイントがさし示されているのが十分感じ取れて、自分の仕事がとてもやりやすくなりました。

一人の患者さんの治療をどうするか考えることが編集であり、私たちの考えと患者さんの考えをキャッチボールすることにより、何度も編集しなおすことの重要さを知りました。 何かとても治療がしやすくなった感じがします。

一方通行ではない会話、つまりお互いがどう治療したいか、治療を受けたいかと帳尻を合わせていくこと、これは難しいことではないなと感じました。 望むことは全部治療の中に組み込みたいのですが、賛成していただけない場合はもっと詳しく説明し、それでもだめならここまで譲歩することができるという一案二案というふうにカードをいっぱい出すことにしました。

選ぶのは患者さん、あなたです。 結果はそれによって違ってはきますが、努力しましょうネ、お互いに。

歯医者さんは味方です!

もう7年も私のオフィスに通ってきている患者さんがいます。

主な治療はすでに終わり、たまには治すところがあることもありますが
あとはずっとメインテナンスに通ってきてくださいます。

その患者さんが昨日話してくださったのは
ここに通うようになってから風邪さえひかないということです。
健康で過ごせるということはありがたいことだと実感しているそうです。

お口の中のケアがすべての風邪を撃退するほど強力ではないにしても、
その方はまじめな方なので、家でもかなり丁寧なケアをしていると思われます。
そして定期的にメインテナンスに通い、お口の中を清潔に保つことによって
雑菌やウイルスも減っているのではないでしょうか。

そろそろ、歯医者さんへの行き方を変えてみてもいいかもしれません。
痛い時や、ムシ歯かな?と思った時に行くところではなく、
何もなくても定期的にメインテナンスに行くところにしてみたらどうでしょう。
そうやって普段からお口の中の状態やムシ歯や歯周病がどのようなものかを知って、
何かあった時には治療するようにすれば、
歯医者さんは怖いところではなく、頼もしい味方になることでしょう。

歯の側面の調整その後(1)

先週の調整では、調整したらまたあごの位置が動いていくと思われたので 少し控えめの調整でとどめ、また1週間様子を見ていてもらいました。

数日はかなり安定しなかったようで、何度も唇をかんだと言っていましたが、 1週間ぐらいたつと安定してきているようです。

安定してくると当たるところも決まってくるようで、今日も少し削りました。 まだあごは動くのでたくさんは削りません。 ほんの少しだけです。

右の犬歯のかぶせものがかなり分厚い形をしていたのですが、 前回の調整で内側を削ったことで左の犬歯(本人の本来の歯)の形に似てきました。

本人の感想では、ずいぶん落ち着いた感じがすると言っています。 ひっかかりがなくなって、あごが更に楽な位置に行くからだと思います。

咬み合わせを考えて治療することの大切さ

先週の金曜日に歯の側面を削る調整をした方ですが、咬み合わせ位置が動いて当たりが変わったというので今週の水曜日と金曜日に再調整しました。

咬合面はまったく削っていないのに、不必要に出っ張っていたかぶせものを削ったことで舌や唇の位置が楽になり、その結果あごもどんどん楽な位置に動いて行ったようです。 家で歌を歌ったら今までと全く感覚が違うほど上あごに響いてびっくりしたそうです。

先週の金曜日削った直後から唇が楽になったと言っていましたが、次の日には咬み合わせが動いたのを感じたそうです。

咬み合わせが動いたことによって咬むと最初に犬歯のみに当たるようになたったので、犬歯の裏側(かぶせもの)を主に削って調整しました。 ここは本来普通に咬んだ時には当たらないところなのです。

その後さらに動いて2番目の前歯(こちらもかぶせもの)にも当たるようになったのでまた調整しました。 今日の調整によって、まださらに楽な位置に動いて行きそうだし、削りすぎても困るのでこの後は少し様子を見ます。

咬合面をいじらなくてもこんなに変化があることは予想はしていましたが予想以上の面もあります。 咬み合わせを考えて、かぶせもの、詰め物、ブリッジ、入れ歯などを作らないとこういうことが起こるということを目の当たりにして、治療時に咬み合わせを考慮することの重要さを再認識しました。

歯の側面の調整

先日友人との話の中で、某歯科医院で歯の内側を削る調整をしたら肩こりが良くなったという話を聞きました。 その治療状況から、これは効果があるのではないかと思いました。

当院でスプリントの治療をしている患者さんで、以前から他の医院で昔治療したかぶせものの位置が元の歯と変わって違和感があると言っている方がいるので、本人の了承を得て歯の内側と外側の側面を削る治療を行ってみました。 削るといってもほんの1ミクロン程度のことです。 咬合の調整は別の時にしているので、今回咬合面は削りません。

削るのはほんのわずかなので微妙な感覚が頼りの細かい作業ですが、患者さんの口の中の状態を見ているうちにどういう方向だと改善するのか見えてきます。

某歯科医院では「発声が良くなりサ行タ行の発音がはっきりする」「滑舌が良くなる」と謳っていて、歌を歌ったり講演をするなど声を職業とする方にこの治療を推奨しています。 今回この治療に付き合ってくれた患者さんは素人ですが声楽をやっているので、声や口の中の状況には敏感なはずです。

治療前と治療後に「あいうえお、かきくけこ、さしすせそ、たちつてと、らりるれろ」としゃべってもらい、ICレコーダーで記録しました。

ICレコーダーを再生するまでもなく、治療後の声は変わっていました。 発音がはっきりして滑らかになり、本人もしゃべりやすいと言っています。 それだけでなく響きも変化していて、本人によると上あごにガンガン響いているとのことです。 「このまま歌いだしたいくらい」(本人談)

思った以上の効果に驚きました。

また、その後スプリントをはめてもらうと、スプリントがはまる部分も削ったのですが、わずかにゆるくなったものの、再調整する必要がないくらいでした。 スプリントをはめてしばらく過ごしたのちの感想では、スプリントをはめても舌がゆったりした気がするとのことです。 スプリントには厚みがあるので口の中は狭くなるのですが、舌が一度ゆるむとリラックスするためと、歯の根元まではスプリントが入っていないのでゆったりした部分を感じるのかもしれません。

この治療は誰にでも効果があるとは限りませんが、舌や頬に歯の跡があったり、頬をうっかり咬みやすい、舌がひりひりするなどの症状が気になる方には効果があると思いますし、直接の症状改善ばかりでなく舌や関連する筋肉も緩むことによってそれ以上の効果を感じる方も多いと思います。

「TCH」を直せば肩こりが治る?

「TCH」って知っていますか? 最近東京医科歯科大学の木野孔司先生があちこちで紹介してTVでも放送されています。

人間は普通は咬んだり話したりしないで口を閉じている時には上下の歯は離れています。 ところが緊張したり、何かに集中しているときに無意識に上下の歯を接触させていることがあります。 特に咬みしめたり食いしばっているわけでなくても、上下の歯が当たっているだけで咬むための筋肉や周辺の筋肉は緊張し、それが長時間になれば肩こりなども引き起こします。

「TCH」とは「Tooth Contacting Habit」の略で、このような上下の歯を接触させる癖のことです。 この癖を直せばそのために起きていた肩こりなど、いろいろな症状が改善される方が多いのです。

このことは私たち歯科医にとっては決して新しい話ではありませんが、TVなどで取り上げられて、「歯を離す」という張り紙を家の中に何か所も貼って、それを見かけるたびに「フーッ」と息を吐いて歯を離すという習慣をつけていくと効果があると紹介されたので、見た方も多いと思います。

筋肉の緊張を解くためには深く呼吸をしてフーッと吐くことが重要で、この呼吸により筋肉が緩みます。 自分で頻繁に気付いて行えるという点では、この張り紙法は名案だと思います。

ただし注意しなくてはならないのは、ここで行うのは張り紙通りの「歯を離す」だけではなく、呼吸が重要だということです。 歯を離すことばかり意識しすぎると、今度は逆に歯を離そうとすることで筋肉が緊張してしまいます。 TCHを直すことばかりを意識していると、かえって緊張が持続してしまうのです。 私も経験がありますが、本当に人間というものは無駄な力を入れてしまうものです。

気づいたら深く呼吸をしてフーッと吐いてリラックス・・・これを続けていればあなたの肩こりも治るかもしれませんよ!

それはムシ歯ですか?

歯が痛くて歯医者さんに行ったのに痛みが消えない、神経を取っても違和感がある、「歯が痛い」「しみる」「ムシ歯のときの痛みと同じ」と言っていらっしゃる患者さんは多いのですが、ムシ歯ではない人が半数以上です。 ムシ歯は治療しなくちゃと思うことがほとんどですから歯医者さんに行きます。でもムシ歯が人がまたそのうちの50%以上なのです。 では何でそのような症状が出てくるのでしょうか。 咬みぐせや気づかない咬みしめ。それは寝ているとき、仕事の姿勢など、ありとあらゆる生活習慣の中で起きます。 それを治療するのは歯科医です。 歯のトータルケアで徹底的に改善しようとしなければ、他の歯にも症状は波及してしまいます。それだけではなく、世の中にいやというほど情報が流れている生活習慣病の一つに十分当てはまってしまうことです。

団塊の世代の歯科治療

これからの生活クオリティを高めるために、
健康でおいしく食べるために
今こそお口の中を見直してみましょう。

人生の軌跡のごとく、歯も相当なストレスがかかっているはずです。
立て直すのは思い立った今です。

大変なことになっている人もいるでしょう。
メインテナンスをしっかりしていれば、チェックだけで終わるかもしれません。
どうぞ相談だけでもいらして下さいネ。
相談:30分 ¥3,150-

全身をむしばむ歯周病と取り組むには

最初から怖い話ですが、歯周病の人は狭心症や心筋梗塞などの心臓病のリスクが通常の人の1.5~3倍高まります。これはアメリカのノースカロライナ大学での18年間の追跡調査で明らかになっているのです。心筋梗塞の病巣からも、なんと歯周病菌が検出されたという報告もあります。そして、歯周病患者の4割が特殊な蛋白質が血中に出て、心筋梗塞のリスクがより高くなるというデータもあるのです。

国立がんセンターでは食道ガンの細胞中に高率に歯周病菌が検出され、ガン発生の原因の一つとも考えられています。また骨粗しょう症、関節炎、老人の肺炎の原因の一つともされているのです。

以上、口の中だけでなく全身をむしばんでいる歯周病は、どう予防したり、治療していったらいいのでしょうか?

歯ブラシを一生懸命やってもこの病気には不十分です。ガンや糖尿病、高血圧などと同様、食生活、ストレスなどが原因で起こる生活習慣病の一つだからです。ストレスの上に、歯ぎしり、噛みしめにより歯のまわりの骨などが破壊されます。またそこに、食事の栄養のアンバランスなどが絡み合い、悪化させていきます。

 

ストレスの改善に役立つのが栄養療法です。

 

歯ぐきの腫れや出血を防ぐ・・ビタミンC、 K、フラボノイド

歯茎の組織と健康を保つ・・・コエンザイムQ10(ユビキノン)

骨の破壊を防ぐ・・・・・・・カルシウム、マグネシウム、ビタミンD、K

ストレスに対抗する・・・・・パントテン酸、ビタミンC

歯周病菌を減らす・・・・・・ビタミンA、B群、C、E、亜鉛、セレン、カテキン

歯垢を防ぐ・・・・・・・・・(砂糖をやめる)

食物繊維の多いものを50~60回噛む。

 

いろいろの栄養を取ることも大事ですが、栄養を取りながらタバコを吸っていては効果もなくなってしまいます。タバコを吸うと歯ぐきに十分に血液が回らないため、菌が増殖しやすくなります。しかもタバコのヤニが歯に付着し、食べかすが吸着するのでますます菌の温床になります。

歯周病で歯を失った本数が多いとよく咬めないため、唾液が出ません。唾液中の消化酵素、解毒が少なくなり、アレルギー、ガンなどにまでなりやすくなってしまいます。

 

これからの生活にはりを持つために、栄養を十分とって全身的な気力、活力を養い、生活習慣を改善して歯周病だけでなくさまざまな病気の予防に努めましょう。

入れ歯と同じではないインプラントの問題

インプラントは「自分の歯のように」使えて十分満足できて幸せな気分になれるものです。 「その時は」という注釈つきですが。

これからの人生10年、20年を考え、骨に打ち込まれた金属を一生ケアできるスケジュールを立ててインプラントを入れているでしょうか。 人生、どうトラブルが生じるかわかりません。 ましてや介護されることになるとインプラントも入れ歯も同じ扱いをされるようでは口の中の感染を考えたときにかなり違いが出ます。

健康で通院可能であれば歯科衛生士がとても繊細にケアテクニックを守り手助けしてくれます。 これが不可能になったらと思うと、歯科医として身が細る思いがして、からだも歯も心配になります。

ちなみに口腔外科医として仕事をしていたことを考えても、インプラントはこれまでもこれからも手がけないと思います。 咬み合わせを考えると、自分の歯と金属の歯との共存はかなりむつかしいこともあります。

最近インプラント治療における事故が問題になっていますが、 それだけではなく、将来のケアまで考えてインプラントを選ばないという選択肢もありだと思います。