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縄文人と現代人の歯と顔立ち |
デンタルインフォーメーション No.120 2006/06/09
最近の日本人の顔が古代人とだいぶ変わってきていると言われていることはご存知の方も多いと思います。
私たち歯科医は、歯・歯周組織・咬み合わせから顔をもう一度見直してみなければなりません。
縄文時代人の頭部は、上下に短く四角くなっています。歯はしっかりすり減って平らになっています。
硬い、粗末な食事をしていた結果です。
その上、革をなめしたり歯で物を加工したりしていたため異常な減り方をしていた歯も多く出土しています。
がっしりした顔立ちでも大きな顔ではなく、立体的で精悍なはっきりした顔立ちになります。
それに比べ、現代人の顔はひょろ長くなり、幅と奥行きは減り、華奢なたよりない顔になっています。
咬合のストレス(食べ物の硬さなど)、顎の骨の密度も減り、特に前歯の生えている顎の骨は明らかに薄く、骨粗しょう症のごとくです。
また、現代人では歯並びの悪い人は多いのですが、歯並びの悪い縄文人は、何と見つかっていません。
縄文人のように健康な咬む機能をずっと維持するためには、一つには、「奥歯」でよく咬むということ、そして次には、硬い食べ物を「前歯」で咬み切ること、これが重大な要素になっています。
顔立ちは親からの遺伝でだいたいは決まっていますが、子供のころの指しゃぶり、舌の突出癖、口呼吸、片側咬みなどにより、特有の顔ができあがります。
表情筋や咀嚼筋(食べるときに咬む作用をする)などの筋肉の動きの異常さが上あごや舌に作用するため、あごはゆがみ、口はゆがみ、美とはかけ離れた顔になってしまうのです。
また、咬む力が弱ければ、骨がしっかりしないので角ばった顔ではなく、スラッとしてあっさりとした長い顔になります。
逆に、格闘技選手は常に顎に力が加わるためエラが張った「ごつい顔」になります。
このように歯の状態は、咬む機能にも顔立ちにも影響を与えてしまいますので、私たち歯科医は機能的でなおかつエステティックを考えた治療をしています。
口もとは顔の中心です。単に一本の歯の治療でも、まわりのいろいろな筋肉や皮膚などを考え、一人の人がスマイルに自信を持てるよう精神を集中して治療する配慮をいつもしています。
親の顔や口もと、本人の昔の写真などを見て参考にした上で治療を進めていく場合もあり、そのたびに納得させられることもあります。
こういうことがお互いの喜びに結び付けられるといいなと思っています。
*この文章は月刊誌「健」に掲載するために書いた原稿から抜粋してまとめたものです。